暴力団ミニ講座

8) 兄弟盃
暴力団組織においては、子分相互の間においても厳重な上下関係があります。
つまり、「分違い(ぶちがい)」といって、暴力団社会における一種の人物的な重みの違い、すなわち「貫目(かんめ)」の違いによって、上下的な関係がきまり、兄弟盃(的屋系暴力団では義兄弟盃)と言われる盃事によって、擬制の兄弟分となるわけです。
もっとも、最近では親子盃と同様に盃事を省略したり、盃事そのものを簡略にする場合も多くなっているようです。
この兄弟盃には2種があって、その1つが、その暴力団の組織内部における子分間相互の兄弟分の関係、もう1つが、他の暴力団員との間に結ばれる兄弟分(出先の兄弟)関係ですが、何れの場合も親分の許可を得た上で盃事を行うわけです。
正式の盃事は、親子盃で説明しましたように、吉日を選び、祭壇を設け、羽織・袴に威儀を正し、厳粛な雰囲気の中で古式に則って儀式を行うわけですが、その模様については割愛します。
ところで、一口に兄弟分といっても、その中身は「五分の兄弟」「五厘下りの兄弟」「四分六の兄弟」「七三の兄弟」「二分八の兄弟」に分かれており、その差が開くほど服従関係が強まります。

●五分の兄弟
最狭義の兄弟分のことで、上下関係なしの対等な関係にある兄弟分です。お互いに「兄弟、兄弟」と呼び合います。
往時、この盃事では、盃を中央におき紙で樋を2つ作り、この樋で同時にお神酒を飲んだと言われ、それに由来して「飲み分けの兄弟」ともいいます。昨今では、盃を2個用い交盃します。
●五厘下りの兄弟
五分の兄弟と四分六の兄弟の中間で4分5厘と5分5厘の関係にある兄弟のことです。
両者の間はごく僅かの差で、座布団1枚をゆずる程度の差といわれています。
本来であれば、五分同士であるが、何らかの事情で一方が遠慮して5厘だけ下り、その5厘を仲人に一時的に預け、仲人は後日機会をみて盃を改め五分の兄弟にするとされています。
●四分六の兄弟
兄分が6分、弟分が4分の差を持つ兄弟分です。兄分は弟分を「兄弟」と呼び、弟分は兄分を「兄貴」と呼びます。なお昨今では兄分が弟分を「舎弟」と呼ぶのが普通のようです。
盃事では、1個の盃に満たしたお神酒を兄分が6分まで飲み、残りを弟分に下げます。
●七三の兄弟、二分八の兄弟
兄分と弟分の差がそれぞれ7分3分と8分2分の関係にある兄弟分です。
盃事においては、盃に満たしたお神酒を、七三の兄弟の場合は兄分が7分まで、二分八の兄弟の場合は兄分が8分まで飲み、弟分に下げます。
二分八の兄弟の場合は、兄弟というよりむしろ弟分は子分に近い関係であるため、兄分を「オヤジサン」と呼ぶこともあります。


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