暴力団ミニ講座

9) 跡目相続の盃、神農盃
暴力団社会では、親分の地位を継承した者をその暴力団の跡目と称しています。
伝統を持つ暴力団では系譜として、その暴力団を受け継いで行きますが、その集団継承行為、すなわち跡目の譲渡及び継承の行為を跡目相続といっています。

跡目相続は暴力団社会では最も重要な誓盃儀礼で、襲名式と銘打って、祭壇を設けた式場において、羽織、袴に威儀を正した多くの客人衆の見守る中、代を譲り先代となる親分と代を受ける当代親分が交盃します。これを「跡目相続の盃」といいます。ただ、的屋系の暴力団では式場に的屋の守護神である神農像を置き、その前で交盃するところから、通常、「神農盃」と称しています。

盃事が無事に終わると、博徒系の暴力団では、先代となる親分から、末広、魂(刀)、承認書、縄張りの譲渡、組旗の授与を行います。的屋系暴力団では以上のほかに神農像と「十三香具虎の巻」を授与します。これは的屋の虎の巻といわれるもので、江戸時代の享保20年、幕府から露店が公認されたときに販売することを認められた香具類13種と露店を公認されたいきさつを書いたもので、的屋では、代々受け継いで行くべき大変大切なものとされています。

跡目の選定は、先代親分の専権事項とされていますが、跡目相続は、先代親分が持っていた諸特権や縄張り、集団内の支配権など総てを受け継ぐものであるだけに、跡目の選定を誤れば一家一門の不和の原因となりがちですので、主要な身内の事前の同意を得るなど慎重を期して行います。

しかし、通常、跡目は自分の直系の一子分(「イチノコブン」、実子分ともいいますが、昨今では一子分のことを若者頭、若衆頭、若頭などと呼ぶのが一般的となっています。)を指定しますが、例外として兄弟分を選定したり、一子分以外の子分を選定することもたまにはあるようです。ただ、自分の実子を跡目とすることはありません。

先代親分が生前、隠退し難い事情があるときは、予め相続人を定めておき、死亡とともに跡目を相続させたり、遺言によって相続人を定めることもあります。

跡目相続によって、先代親分は現役を隠退し、「隠居」(インキョ)となります。隠居は組織に対する発言権もないのが一般的ですが、しかし、その年齢と実力によっては、その組織の後見役となる場合もあります。
また、跡目相続された組織内では、当然、当代親分と他の組員との間に身分変化が起こり、昨日までの同輩も「一文下り」となり相手を親分と呼ばなければならなくなります。ときには、それを機会として、「分家」として当代親分と同格の独立を与えることもあります。その他の組員は当代親分と改めて親子盃を行います。


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