暴力団ミニ講座

25) マネーロンダリング
マネーロンダリングとは、犯罪者が麻薬取引など不法な取引によって得た、いわゆる汚れたお金を、架空名義の銀行口座へ預金したり、或は株券や債券を購入したり、正常な商取引による売上げに混入させるなどして、いわばそのお金をきれいなお金に洗浄(ロンダリング)してしまうことを意味します。

もし、犯罪者が不法な取引によって得たお金を、そのまま所持していた場合には、捜査機関は当然そのお金を取引きの証拠品として押収することになりますし、有罪が確定すれば、「犯罪行為によって得た物」として、裁判所に没収されてしまうことになります。

つまり、暴力団など犯罪者側からすれば、不法取引で得た汚れたお金を、いかに手際よく洗浄してしまい、証拠品として押収されるのを免れ、かつお金の出所を隠蔽しながら現実に使えるきれいなお金に換えてしまうかが、極めて重要なことになります。

反対に、こうした汚れたお金のマネーロンダリングを許さないように、法的な規制を加えることによって、暴力団等犯罪者の犯行を抑止し、更に資金面から彼らの活動を締めつけることも可能となるわけです。

そのため、欧米諸国の多くの国においては、マネーロンダリングを特別の犯罪形態として規制し、刑法その他の特別法規によって処罰できるようにしています。

また、国際的にも、麻薬が国境を越えた問題であるところから、国際的な麻薬取引を抑制するために、1988年(昭和63年)のトロント・サミット政治宣言、1989年(平成元年)のアルシュ・サミット経済宣言において、麻薬取引によるマネーロンダリング規制のための国際協力がうたわれました。更に国際連合においては、1988年(昭和63年)12月、「麻薬及び向精神薬不正取引の防止に関する国際連合条約」(麻薬新条約)が採択され、条約の締約国にマネーロンダリングの規制を要求しました。

我が国は、1989年(平成元年)12月に麻薬新条約に署名し、その後それを批准しましたが、それに伴って、1992年(平成3年)10月には、いわゆる麻薬二法案、すなわち、「麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律」及び「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」が成立し、1993年(平成4年)7月1日から施行されました。

この麻薬二法のうち、後者の特例法によって、麻薬犯罪による不法収益の剥奪という観点から、麻薬犯罪によって不法に得られた利益を広範囲に没収するとともに、このような没収を免れるために行なわれるマネーロンダリング行為を処罰することができるようにし、あわせて銀行等金融機関がそのような不審な取引があったことを認知した場合には、法務大臣または都道府県知事に届出することを義務づけました。

ここにおいて、我が国においても、麻薬犯罪取引に限定されてはいるものの、マネーロンダリングが処罰の対象となることとなりました。

以上のとおりですが、我が国においても麻薬犯罪によって得た不法収益のマネーロンダリングだけでなく、欧米諸国に見られるように、もっと広く犯罪取引によって得た不法利益のマネーロンダリングを処罰できるようにして行くことが、今後の暴力団対策上重要なことと認められます。

平成11年8月12日、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」が制定され、同年8月18日に公布されました。
この法律の制定によって、今後、欧米諸国並にマネーロンダリングの取締り規制が可能となりましたので、その効果が期待されます。


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